キャリアコンサルタント試験では、複数の理論家やその理論が出題されるため、しっかりとした理解が求められます。各理論家が提唱するキャリア理論には、それぞれ独自の視点があり、個人のキャリア発達や選択に関わる重要な要素が含まれています。この記事では、試験に頻出する代表的な理論家とその理論をまとめています。理論家とキーワードを紐づけし、ポイントを押さえ、効果的に試験対策を進めましょう。
1. ドナルド・スーパー(Donald Super)
理論名:キャリア発達理論
スーパーは、キャリアが生涯を通じて成長・発展するプロセスであるとし、ライフステージごとに異なる課題を乗り越える「発達的視点」を強調しました。彼は「ライフキャリア・レインボー」という概念を提唱し、個人のキャリアが「自己概念」を通して形作られるとしています。
主要概念キーワード:
- ライフキャリア・レインボー:個人の役割が人生の各段階で重なるというモデル。
- キャリア発達段階:成長期、探索期、確立期、維持期、解放期の5つの段階でキャリアが発達する。
- 自己概念:キャリア選択は、個人が自分の価値観や能力をどう見ているかによって決まる。
2. マーク・サビカス(Mark Savickas)
理論名:キャリア構築理論
サビカスは、キャリアを自己の物語を通じて構築していくものだとし、人生を「ナラティブ(物語)」として理解する「ナラティブ・アプローチ」を重視しました。キャリアは人生のストーリーであり、個々人が自身の経験や価値観に基づいてキャリアを構築していくとしています。
主要概念キーワード:
- キャリア・アダプタビリティ:キャリア選択や移行に対して柔軟に適応する能力。
- ライフテーマ:人生を通じて追求するテーマがキャリア選択に影響を与える。
- ナラティブ・アプローチ:キャリアを物語として捉え、過去の経験から未来を築く。
3. エドガー・シャイン(Edgar Schein)
理論名:キャリア・アンカー理論
シャインは、個人がキャリアにおいて最も重要視する価値や動機を「キャリア・アンカー」と呼び、それがキャリア選択や行動の基礎になるとしました。アンカー(錨)とは、個人が自分を定義する要素であり、キャリアの中核となります。
主要概念キーワード:
- キャリア・アンカー:自己概念に基づき、キャリアにおける最も重要な価値(例:専門技術、管理能力、独立・自由、安定・保障など)。
- キャリア発達:個人のキャリアアンカーが、キャリアの選択とその後の行動に大きな影響を与える。
4. サニー・ハンセン(Sunny Hansen)
理論名:統合的生涯設計理論(ILP)
ハンセンは、キャリアと人生全体を統合的に考えることの重要性を提唱しました。「統合的生涯設計理論(ILP)」では、キャリアを単なる仕事選びではなく、個人の価値観や生き方と結びつけるものと考えます。多様性、変化、家族、コミュニティ、そしてスピリチュアルな側面まで含めてキャリアを設計することを強調しています。
主要概念キーワード:
- 統合的生涯設計理論(ILP):人生の多くの側面(仕事、家庭、コミュニティ、自己成長など)をキャリアの一部として捉える。
- 多様なキャリア:個人の成長を支えるために、様々な選択肢を検討することが大切。
5. ナンシー・シュロスバーグ(Nancy Schlossberg)
理論名:転機理論(Transition Theory)
シュロスバーグは、キャリアや人生における「転機」を中心にキャリア発達を説明しました。転機とは、人生における大きな変化や出来事のことで、これに適応するための「4Sモデル」を提唱しています。
主要概念キーワード:
- 4Sモデル:転機への適応を助ける4つの要素(Situation=状況、Self=自己、Support=支援、Strategies=対処法)。
- 転機:人生の中で起こる重要な変化や挑戦を意味し、それをどのように乗り越えるかがキャリア形成に影響を与える。
6. ハリー・ジェラット(H.B. Gelatt)
理論名:積極的不確実性理論(Positive Uncertainty Theory)
ジェラットは、キャリア選択における不確実性を受け入れ、それをポジティブに捉える「積極的不確実性理論」を提唱しました。変化が激しい現代社会では、未来を完全に予測することはできないため、予測不可能な未来に適応する柔軟性が重要としています。
主要概念キーワード:
- 積極的不確実性:不確実な未来を受け入れ、柔軟に対応する姿勢がキャリア選択において重要。
- 意識的な選択:未来を予測しすぎず、現実と希望のバランスを取りながら決断すること。
7. ジョン・クランボルツ(John Krumboltz)
理論名:計画的偶発性理論(Planned Happenstance Theory)
クランボルツは、偶然の出来事をキャリアの発展に活かす「計画的偶発性理論」を提唱しました。彼は、偶然の出来事がキャリアに大きな影響を与えることが多いため、その偶然を積極的に活用することが大切だとしています。
主要概念キーワード:
- 計画的偶発性:予期せぬ出来事をポジティブに捉え、それをキャリア発展のチャンスとする。
- 好奇心と柔軟性:新しいことに興味を持ち、変化に対して柔軟に対応することがキャリア形成の鍵。
8. アルバート・バンデューラ(Albert Bandura)
理論名:社会的学習理論(Social Learning Theory)
バンデューラは、人が他者の行動を観察し、模倣することで学ぶとする「社会的学習理論」を提唱しました。キャリア選択においても、周囲の影響やモデルとなる人物の影響を強く受けるとしています。
主要概念キーワード:
- 観察学習:他者の行動を観察し、模倣することでスキルや知識を習得する。
- 自己効力感:自分がある行動を成功させられるという信念がキャリア選択に影響を与える。
9. ウィリアム・ブリッジズ(William Bridges)
理論名:トランジション理論(Transition Theory)
ブリッジズは、キャリアにおける変化(トランジション)を管理するための理論を提唱しました。彼は、キャリアにおける変化を3つの段階で説明し、「終わり」「ニュートラルゾーン」「新たな始まり」のプロセスを通じて適応が進むとしています。
主要概念キーワード:
- トランジション:キャリアや人生の転機を通じて、個人がどのように変化に適応するか。
- 3つの段階:変化の初期段階(終わり)、混乱と再調整の期間(ニュートラルゾーン)、新たな始まりの段階。
10. ナイジェル・ニコルソン(Nigel Nicholson)
理論名:キャリア・トランジション・サイクルモデル
ニコルソンのモデルでは、キャリアの転機や変化(トランジション)は準備→遭遇→適応→安定化の4つの段階を繰り返しながら発展していくとされます。このサイクルを繰り返し、個人のキャリアは成長し続けると考えられています。
主要概念キーワード:
- キャリア・トランジション・サイクル:キャリアの変化は一回のイベントではなく、準備、遭遇、適応、安定化という4つの段階をサイクルとして繰り返しながら進行するという概念です。
まとめ
キャリアコンサルタント試験で取り上げられる理論家たちの理論は、キャリア発達におけるさまざまな視点を提供してくれます。スーパーのキャリア発達理論や、サビカスのナラティブ・アプローチ、ニコルソンのキャリア・トランジション・サイクルなど、それぞれの理論は異なる側面からキャリア形成を捉えています。これらの理論をしっかりと理解し、試験に備えることも大切ですが、キャリアコンサルタントとしての実践にも大きく役立ちます。試験対策としてこの内容を復習し、自信を持って試験に臨んでください。
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